今回は患者様のRちゃんについて紹介します。こちらの症例紹介についてはオーナー様の快いご承諾とご協力に感謝いたします。【患者背景】犬(ミニチュアダックスフンド)、4歳、未去勢オス【主訴】嘔吐の回数をしており、食欲が下がっている。元気は問題なし。【既往歴】なし【検査、評価】触診上では、1つの精巣は触知可能だったが、もう一つの精巣は触知出来ず、腹腔内にある事を疑った。腹腔内の精巣は腫瘍化しやすいため、念のため超音波検査を実施した。超音波検査では腹腔内にて精巣を認めたが、拡大はしておらず腫瘍化はしていなかった。また胃腸の動きは問題なく、超音波検査では明らかな異物は認めなかった。問診時に早朝のみ嘔吐と食事の時間より、胆汁嘔吐症候群を疑った。【診断】胆汁嘔吐症候群疑い潜在精巣(別の症例紹介にて記載)【治療、経過】胆汁嘔吐症候群に対しては、胃酸のコントロールとして胃酸分泌抑制剤の処方と食事時間の見直しを行った。それ以降食事時間の見直しのみでコントロール可能であった。潜在精巣については後日外科的切除を行った。【考察】犬の胆汁嘔吐症候群は、健康な犬で認められる空腹時の生理的な嘔吐であり、通常は命に係わる病気ではありません。胆汁嘔吐症候群では、元気や食欲もあり体重減少も認めず、下痢はほとんど起きません。典型的な嘔吐として早朝に黄色液体のみ嘔吐をし、嘔吐後は何事もなかったように元気であることが多いです。稀に悪心などにより食欲が下がることもあります。主な原因は空腹時の胆汁の逆流です。通常は胆汁は、十二指腸に分泌され消化を助けているが、長時間の空腹時には胃に逆流し、胃酸と混ざることで悪心が生じます。空腹時間や消化器の蠕動運動と関係性があります。治療としては①空腹時間を短くするために食事時間の見直し②朝方のみの場合は、オーナー様のご就寝時に少量のご飯をあげる③上記でも改善しない場合は、胃酸分泌抑制剤の服用があります。また他の疾患でも黄色混じりの液体を嘔吐する事があります。代表的なものとして、慢性腸症(CIE)、腫瘍、寄生虫や細菌の感染症、ホルモン性疾患があります。下痢や食欲不振や体重減少がある場合は、上記の疾患を強く疑いますので、その場合は血液検査、画像検査(レントゲン検査や超音波検査)を行う事があります。また上記の検査でも解決しない場合は、内視鏡検査にて消化管の観察と、内視鏡時の組織生検を行う事もあります。